羽田の「発着枠」とは?――制度の基本と配分の考え方
羽田空港は処理能力(滑走路・空域・ターミナル)に上限があるため、1日に離着陸できる便数=発着枠(スロット)が国(国土交通省)によって管理・配分されています。
ビジネス需要が集中する首都空港のため、どの航空会社に、どの時間帯を、どれだけ配分するかは、ANAとJALの競争や地方路線の維持、外交交渉まで影響する重要テーマです。
- 発着枠=時間帯×本数の「入場券」。需要の大きい羽田は枠が極めて希少。
- 国が配分し、公共性・公平性・競争促進・地域バランスなどを勘案。
- 国内線/国際線(昼間・深夜早朝)で枠が別建て。配分はANA・JALの事業戦略に直結。
国土交通省(航空局)が枠総量・配分方針を定め、航空会社に割当。空港会社・管制・騒音協定などと整合させます。
公共性(地域路線の維持)・ネットワーク性・定時性・実績・需要見通し・国際交渉の結果などを総合評価。
滑走路容量、羽田周辺の騒音・飛行経路、首都圏空域(自衛隊・米軍含む)のやり繰り、ターミナル・スポット数が上限に。
枠の種類(ざっくり)
- 国内線枠:幹線(羽田〜新千歳・伊丹・福岡など)と地方路線のバランスを政策的に調整。
- 国際線枠(昼間):需要が高く希少。日米・日欧・日中などの二国間交渉の枠組みが前提。
- 国際線枠(深夜早朝):昼間よりは取りやすいが、旅客利便性や乗継設計に課題。
- 政策目的枠:新規参入や地方活性、イベント期などに限定的に設けられることがある。
配分の主な評価軸(例)
ネットワーク効果(乗継利便)
定時運航・安全実績
需要・収益性の妥当性
国際交渉の対等性
競争促進・利用者利益
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 発着枠(スロット) | 特定の時間帯に離着陸できる権利の単位。便数と時間帯がセット。 |
| 昼間/深夜早朝 | 需要・騒音・運用制約が異なる時間帯区分。配分方針も別建て。 |
| バンク(波)運航 | 国際線の到着・出発を波状に集約し、乗継効率を最大化する設計。 |
| コードシェア | 他社便名で販売する共同運航。枠の実効的な活用とネットワーク拡張に寄与。 |
※スマホでは表が横スクロールできます。重要ポイントは太字・下線で強調しています。
ANAとJALの発着枠をめぐる競争の歴史
羽田の発着枠配分は、ANAとJALの企業戦略や市場シェアを大きく左右してきました。
とくに2010年のJAL経営破綻を境に、国土交通省が「ANA優遇・JAL抑制」の配分を行ったことで、両社の立場は大きく変わっていきます。
国の公的支援を受けたJALは再建に専念することとなり、新規の羽田発着枠や国際線の増枠はANAへ優先的に割当。ここから「ANA拡大路線」が始まります。
欧米主要路線(ニューヨーク・ロンドン・パリなど)の多くをANAが獲得。
JALは経営体力が戻っていたものの、「再建支援の手前、過度に優遇できない」として抑制されました。
羽田昼間発着枠12枠のうち、日本側6枠をANAとJALで3:2の比率で分配。残り1枠は地方路線に。
依然としてANAが優位な配分構造となりました。
ANAはスターアライアンスのハブとして成長、JALはワンワールド内で劣勢に。
JALは「経営再建は完了した、配分格差を是正してほしい」と訴えていますが、国は慎重な姿勢を続けています。
- 羽田での発着枠が増加し、国際線拡大の主役に。
- スターアライアンスを軸に、米欧アジアへの接続強化。
- 国の方針に支えられ、規模ではJALを逆転。
- 経営破綻からの再建を完了しつつも、配分では抑制。
- ワンワールド連合の中で戦略的に差別化を模索。
- 「ANAとのバランス是正」を国に要望し続けている。
今後の課題と展望――ANA・JAL、羽田発着枠をめぐる行方
羽田の発着枠はすでに限界に近く、次の配分は国家戦略レベルの判断になります。
ANAとJALのバランスだけでなく、成田や地方空港、国際競争力、外交関係まで視野に入れた総合的な政策が不可欠です。
今後の主要課題
- ANAとJALのシェア格差:現状はANAが優位。JALは「再建完了後の平等化」を主張。
- 国際線拡張の限界:需要増に比べ枠は不足。成田との役割分担が不可避。
- 地方空港の路線維持:羽田枠が幹線に偏ると、地方便の存続が難しくなる。
- 外交要因:米国・中国・欧州などとの二国間交渉の結果次第で配分が変化。
- 環境・騒音問題:都心上空ルートなど社会的受容性が制約条件に。
想定されるシナリオ
現行方針を継続し、ANAを国際競争力の中心と位置づける。
メリット:日本発の国際ハブ力強化。
デメリット:JALの成長制約、不公平感。
次回の拡張時にJALへの配分を増やしバランス回復。
メリット:公平性の確保。
デメリット:ANAの成長鈍化、スターアライアンス戦略への影響。
羽田はビジネス中心、成田は観光・長距離国際に再整理。
メリット:首都圏全体の容量増。
デメリット:成田アクセスの課題が残る。
一部枠を地方路線・LCC・新規参入用に確保。
メリット:利用者多様化、地域振興。
デメリット:大手2社の国際線拡張はさらに制約。
次回の配分が、両社の戦略にとどまらず、日本の航空産業の方向性を決めるカギになります。



